「なんか愛が逃避行だったよー」
そんなことを言いながら、将棋クラブに健が戻ってきた。
なかなか戻ってこないと思ったら、出前を頼みに行ったはずなのに、自分でおかもちを持って帰ってきている。
手が足らないからか、若林も連れて。
「いやー、田中先生、消されてましたよ~」
とおかもちをテーブルに置きながら、相変わらずよくわからないことを若林が言う。
今日は珍しく、将棋を打っている、いつものおじいさんに付き合っていた田中だが、若林に気を取られそうになった。
いや、棋士たるもの、いついかなるときも平常心でなければ。
そう田中が思ったとき、
「これこれ、見ました?」
オムライスなどをおかもちから出して並べている健の側で、若林が小脇に挟んでいた週刊誌を開き、見せてくる。



