和菓子屋に絶望のタヌキがいるんだが……。 田中は仁風堂という店名が入ったガラス越しに店内を見ながら固まっていた。 ショーケースの向こうにいる絶望のタヌキは色のない目でスマホを見ている。 せめて、商品を見ろ、 と思ったとき、めぐるが顔を上げた。 こちらの姿に気づき、 「いらっしゃいませー」 と覇気のない声で言う。 仕方がないので、ガラガラと木枠の重いガラス扉を開けると、めぐるは流れるように言ってきた。 「いらっしゃいませ。 こちらでお召し上がりですか?」