「岩田由紀乃」
「………え、はい?」
「授業が終わったら、昨日回収した問題集を取りに職員室まで来い」
「…は?」
翌日の4限目。
生物の授業開始前に、坂本先生は私にそう言い放つ。
「え、先生。今日私、当番じゃない……」
「うっせぇ。俺が来いって言ったら黙って来い」
「……」
何、何なの一体。
私…何かした?
「由紀乃、マジでウケる」
「全然ウケないわ…。私、何かしたかな?」
「昨日の話、聞こえていたとか?」
「絢斗先生のやつ?」
坂本先生の授業いらないって言ったけれど。
それかな?
「……わかんね、まぁ…別に坂本先生に何を思われようが良いけど。ちょっと、職員室行ってくるわ」
「うん、いってらっしゃい」
昼休みでみんながお昼を食べ始める中、1人向かう職員室。
「2年A組の岩田です。坂本先生に用があって来ました」
「えっと…坂本先生はいらっしゃらないみたいよ」
「……え?」
「お昼だから。裏庭にいらっしゃると思う。廊下から覗いてごらん?」
「………分かりました。ありがとうございます」
……え?
呼び出しといて自分は居ないってどういうこと?
「舐められている…」
授業が終わってそんなに経っていないし。
早すぎない?
少し苛立ちながら、言われた通り廊下から外を見る。
下を見ると、ベンチに座っている坂本先生が見えた。
本当に裏庭に居た。
「…………」
ここは2階だし、声は届くはず。
そう思い、窓を開けて叫んでみた。
「坂本先生!!」
その声にビックリしたように体を跳ねさせ、こちらを向いた。
私の顔を見て、何かを思い出したかのような表情をし、先生も声を発する。
「放課後、来い」
「………はぁ!?」
いや、マジで有り得ない。
自己中心的にも程がある。
自分が授業終わったら来いって言ったのに…!!!
「むかつく!!」
先生にそう言い放って、廊下の窓をピシャリと閉めた。
大体ダサいんだよ、ジャージ。
その上、態度は悪いし口も悪いし。
授業も面白くないし分かりにくい。
自己中心的。
何で教師をしているんだろう。
良いところなんて、何1つ無い。
「あれ、由紀乃。問題集は?」
「坂本先生ね、行ったらもう休憩してた。また放課後に来いって」
りっちゃんに坂本先生の悪口をグチグチと零す。
止まらんわ…悪口。
「冷酷先生の自己中にも程があるね」
「マジそれ。あー嫌だ。病みそう」
「今日、絢斗先生は?」
「塾は休みの日なの~!!」
癒しに会いたい。
大好きな、絢斗先生。