「絢斗先生!」
「あ、ゆきちゃん。お疲れ様」

今日も素敵な絢斗先生。
走ってその胸に飛び込む。

「聞いて、今日坂本先生がね、授業中に1回だけ笑ったんだ」
「凄い…唯斗、成長したね」
「教室はざわついたけど」
「まぁ…そうだね。ゆきちゃんの学校では、笑ったことが無かったのだからね」

絢斗先生に軽く背中を押されながら建物の中に入る。

「坂本先生、笑ったら可愛い。ずっと笑っていたら良いのにね」

思わず漏れた言葉。
その言葉に、絢斗先生は敏感に反応する。

「…あれ、ゆきちゃん? そんなこと言っていると、お兄さん、怒っちゃうよ?」
「別に深い意味は無いよ。絢斗…」

小声でそう言うと、優しく頭を撫でてくれた。

「後で、覚えておきなさい」
「やだー、怖い~」

周りに聞こえないように、小さく2人で笑い合う。


「…さて、ゆきちゃん。今日も勉強を頑張ろうね」
「うん、絢斗先生。お願いします」
「お願いします」










生物と、似つかわない双子の間で。  終