「岩田由紀乃。放課後、職員室に来い」
「………」

あの日、絢斗先生の家で見た坂本先生は…幻覚だったか…妄想だったか…。

生物の授業終了後。
今日もいつも通り、態度の悪い坂本先生がそう言い放った。


「ねぇ由紀乃。絢斗先生の弟、どうだった? 紹介して欲しいんだけど!」
「………」

そう言えば、りっちゃん。
そんなこと言っていたな。

「ねぇ~、カッコよかった?」
「……りっちゃん。心して聞いて欲しいんだけど」
「え、何々?」

小さく深呼吸をする。
…何だろう、何故か心拍数が上がっている。

「…絢斗先生、坂本絢斗っていう名前だったの」
「……うん」
「でね、弟の名前がね…坂本唯斗っていうの。高校の理科教師らしいよ」
「…………………それって……」
「…そう。あの、坂本先生だった…」
「え、ウソ? …………え……マジで?」

りっちゃんは頭を抱えて俯いた。

「由紀乃から聞く絢斗先生の様子と、冷酷先生…全く結び付かないんだけど」
「でしょ? 私も未だに信じられない」

真逆な2人の性格。
全く似つかわしくない。


だけど、絢斗先生の前での坂本先生は学校とは様子が違った。

どっちが本当の坂本先生か…。
…なんて、興味は無いけれど。


「………いや、うん。冷酷先生は無いわ。ごめん由紀乃、今回は無かったことにして」
「うん、まぁ…私もそのつもりだよ」


しかし、あの2人が本当に兄妹で…しかも双子だなんて。
やっぱり、実感が沸かない。