案内された部屋は綺麗に整っている。
大人な雰囲気が漂うその部屋に、心拍数が更に上がった。

「ゆきちゃん、こっちおいで…」

床の上に胡坐をかいて座った絢斗先生。
左手で足をポンポンと叩きながら、右手で手招きをしている。

「…うん」
「良い子だね」

大人しく絢斗先生の上に座ると、優しく後ろから抱きしめてくれた。

「先生、あったかい」
「ゆきちゃんもあったかい」

体を回され、今度は向かい合うように座る。
目と目が合うと、絢斗先生は優しく微笑み、そっとキスをした。

「ふふっ」
「ゆきちゃん、柔らかい…」

その後も啄むようなキスを繰り返し、そのうち先生は舌を絡めて深いキスに移行する。

初めて経験する深く濃いキスに、体の力が抜けた。

「…大丈夫?」
「……うん」

先生の体にもたれ掛かり、顔をうずめる。
大人なその行為に、心臓が破裂しそう。

「可愛いね、ゆきちゃん。可愛すぎて、頭がおかしくなりそうだよ」

余裕そうな表情をしているのだけど、先生の顔は耳まで真っ赤になっている。

そんな様子に、また一層心拍数が上がった。

「絢斗先生、好き」
「こういう時は…先生っていらないよ」
「…絢斗…さん?」
「…いや。絢斗で良いよ。由紀乃」

こんなにドキドキしたことが、これまでの人生にあっただろうか。
初めてのことだらけで、もう本当に脳も心臓も持たない。

「………絢斗…」
「…うん、良い子だね。由紀乃…好きだよ」

優しく蕩けそうな絢斗先生との時間。

幸せ過ぎて、温かくて。



坂本先生のことなど、すっかり頭の中から消え去っていた。