「何かの行き違いかしらね。わかった。ありがとう」
「はい」
芙蓉はバックヤードに入ると真っ先に支配人のところへ行った。ところが、いつもは暇そうに携帯をいじっている支配人の貝原繁は見当たらない。
「支配人はどこです」
「諏訪内さん、どうしました?すでに時間ですよ……今日は朝からVIPが来ましたので支配人はオーナーと対応中です。あなたもコンシェルジュなんですから、きちんとお客様に対応してもらわないとね」
副支配人のにやりと笑う目元に悪意がある。芙蓉はピンと来た。
「支配人が私にだけ伏せたのね」
「そんなわけないじゃないですか」



