ドッ
「な、に……今の……」
混乱の極地にいて。さっきまでの事が本当に現実だったのかな?って、何度も自分に問いかけていた。
でも両手に持つ傘を見たら、さっきのが夢か現実かなんて一目瞭然で……。
――君が濡れる方が嫌だし
――風邪ひかないうちにさすんだよ
「――〜っ!」
私は人生で初めて、男の人にドキドキした。
「あ、あれが大人の余裕ってやつなのかな? す、すごかったなぁ~!」
人生で初めてのドキドキを覚え、テンションが上がってしまう。
変に大きな声で独り言を呟きながら、駅へと向かった。
「本当は、徒歩通学なんだけどな」
見ず知らずの怪しい人に、自分の情報を一つだって教えたくないと思って、嘘をついた。
――駅です。電車通学なので
だけど、男の人の言葉を聞いて……肩の力が抜けた。
「そこに傘を置いといて」なんて。一人で身構えた自分がバカみたいだ。



