まだ見ぬ恋の待ち合わせ (短)


「こうすればOkだから、って聞いてる?」

「えと、はい……あの、…………はい」


目の前の光景が、なんだかわけわからなくなって。

自分が何を喋っているか、何を考えているかさえ分からないくらいパニックになってしまう。


絶対にヤバい女子高生だと思われてるよ……。

私だって、今の自分をヤバい奴だって思うもん!


自分に自分にドン引き!って思ってるのに。

男の人――聖山さんは「はは」と笑った。


「やっぱ若いっていいね、元気でよろしい」

「こ、子供扱い、してますか……っ?」

「他意はないよ、素直な気持ち。そうだ、君。名前は?」

「え、……」


いくら名刺を見せられたからと言って。
いくら無害そうな大人の男性だからと言って。

この時代、知らない人にホイホイと名前を教えていいものか――なんて。

そんな「信用できないオーラ」が私から溢れていたのか、聖山さんは「おっと」と伸ばした腕を、車内に戻した。