まだ見ぬ恋の待ち合わせ (短)


「こんな重……じゃなくて。こんな良い傘……むりです、使えません!」

「あ、重かった? 実は腕を鍛えたくてね。ちょっと重めにしてもらってるんだ。俺専用にね」

「〝俺専用〟!?」


たかだか傘を、オーダーメイド!?


「なおさら使えません!」

「そんなこと言わずにさしてよ。君が濡れる方が嫌だし」

「ッ!」


やっぱり、見た目よりも大人なんだと思う。

こんな歯の浮いたセリフを、すんなり言えるなんて……。

聞いてるこっちが恥ずかしいです!


「あ、開け方わかる? ここにホックがあるからね、これを――」

「~っ」


ドキッ


窓から男の人の手が伸びてきて、ゴツゴツした二の腕が私の目の前を横切った。

それだけのことで。

クラスの男子からは得られない、特別な胸の高鳴りを覚える。