「でも置いておくなんて……出来ないよ」
なんたってオーダーメイドの傘だもん。
それに――
「このドキドキの正体を知りたいな」
この傘と一緒にいたら、ドキドキの答えを知れる気がして。
私の中で止まっていたモノが動きだす気がして。
「何かが……始まる気がする」
ギュッ
傘の柄を、強く握り締める。
一度でも雨に濡れた体は冷えて行っているのに、傘を持っている手だけはほかほかと温かい。
「あ、お礼にコーヒーとか……や、やりすぎかな?」
そういうつもりで傘を渡したわけじゃないって言ってたし……。
でも、何もしないっていうのもいたたまれない。
「あ~、もう。どうすればいいのー!」
ソワソワ、そしてワクワクする気持ち。
これが恋の始まりなんだって、
キキッ
「あれ? わざわざ待ってくれてたの?」
「え、あ……ッ」
その答えを知るまで、あと5分――
𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸



