「何か困ったことがあったら孫ではなく、僕に言って下さい。何でも協力しますよ。」
そう言いながら私に名刺を渡して、前田さんと一緒に高級車に乗り込み、ゆっくりとY地区から離れていった。
虚勢を張ってたせいか、ドッと力が抜けて思わず地面に座り込んでしまう。
「小春!」
一番に気付いたのは悠紀くんで、慌てて私に駆け寄ってくれた。
「大丈夫か?具合悪いのか?」
「いや……何か安心して力が抜けたというか……。」
「本当にごめんな。俺、マジで最低だったな。」
地面に座り込んだ私と同じ目線で話してくれる悠紀くん。
その胸元に光っている文字から優しくて暖かいオーラを感じ取れる。
同じだね、悠紀くん。
その運命の文字、私と同じなんだよ。
私ね、悠紀くんの運命の相手なんだよ。
……でも言えない。
彼の為に動いてきたこと。だけどやっぱり、私には自信も無ければ悠紀くんに釣り合う容姿なんかじゃない。
髪の毛も乱れ、近くで見える距離に息が荒くなって眼鏡が曇る。
可哀想過ぎる、悠紀くんが。
私なんかが運命の相手なんて、申し訳なさ過ぎるんだよ。
「……大丈夫です。それより、Y地区が無くならなくて良かったですね。これで少し、悠紀くんが平和に過ごしてくれたら…私は…。」
……私は。
満足です。
悠紀くんの力になれたことを、誇りに思いながら皆の邪魔にならないようにまたひっそりと生きていける。
元々の私に帰るだけ。
「悠紀くん…元気でね。ありがとうございました。」
ゆっくりと立ち上がろうとしたその時、強い力に引っ張られたと思った瞬間、所々硬いのに柔らかくて良い匂いがする。
彼の腕の中。


