視える私の見える好き


「お嬢さん、君がゴミと呼ぶこのY地区は僕の生まれた地区ですが?」

「「「っっ!?」」」

前田さんのお祖父さんは、足が悪いのか、杖を持って歩行している。しかし、立派なスーツに貫禄のあるオーラ。

そしてこのY地区出身だと明かして、私以外のY地区のメンバーは目をまん丸くさせて驚愕していた。

「僕が産まれた時は今より何もなくて、X街の人間だとかY地区出身だとか、差別されることなくのびのびとした土地だったんだ。思い出も深いからこの地区の土地を全てまるごと買い取って、移住する住民達には自由に使わせていたんだ。まぁ少し、良くない噂が立つ場所になってしまったけどね。」

皆、ゆっくりと話す前田さんのお祖父さんの話を黙って聞いていた。

「この土地を無くすつもりはサラサラ無いが、もう少しこの地区の住民には住みやすい環境にしてあげるべきだった。悠紀くんと言ったかな?この地区を守ろうとしてくれてありがとう。僕がもう少し早く動いてあげたら良かったね。」
「……いや、別に…。」

突然名前を呼ばれた悠紀くんが、少し戸惑いながらぶっきらぼうに返事をする。

「前田会長、私の馬鹿娘が本当に失礼なことを…!何とお詫びをしたらいいか……。」
「いやいや、孫が頼み込んでも渡すつもりは無かった土地なので、気になさらず。…ただ。」

穏やかに話していたお祖父さんが、険しい顔つきで美那さんを睨む。

「自分の欲望の為に、嘘をついたり人様の店に放火をする。その放火も、罪から逃れて他人のせい。人の道から外れるにも程がある。言語道断ですな。」

美那の顔色は真っ青になり、私にしか見えない運命の証が無い代わりに、黒い靄が美那の身体を包み込み、鼻を抑えないと耐えられない臭いまで放っていた。