視える私の見える好き


分かっている。
いくら殴られた経験が無い私でも、手を出してしまえばどんなにこちらが非がなくても、状況は圧倒的に不利だろう。
まして地位のある美那のことだ。
想像もつかない罪を着せられる可能性だってある。


「……小春。」

いつの間にか私の側に立っていた悠紀くんが、小さな声で私の名前を呼ぶ。

「……何ですか。」
「ごめん。一瞬でもお前のこと疑ってて悪かった。俺、馬鹿だから。全然…世間知らずで。マジで、ごめん。」

背の高い悠紀くんが、申し訳なさそうな顔をしながら私の瞳を見て謝る。

「ゆうま達や母さん達とか……もっと胸張って生きて欲しくて……。美那が、住む場所とか仕事とか、全部用意してくれるって聞いてて。」
「……。」
「考えたら分かるよな。そんな話あるわけないよな。なのに俺…。Y地区の知ってる所全部行ったり話したりして。マジで俺…。」


だんだんと自分のしてしまった行動を思い出している悠紀くんが、ニヤニヤしている美那の姿を見て後悔している。

「だからガキなんだよ。」

マスターさんがタバコを吸いながら、悠紀くんの頭をベシッと強めに叩く。

「俺のせいで、Y地区無くなったら…。」
「そん時はそん時だろ。そもそもお前のせいじゃねーよ。」

不安そうに話す悠紀くんを見るのが初めてで、ズキッと胸が傷んでしまう。
よっぽど仲間想いなのだろう、皆の為に協力していたことが、本当は騙されていたなんて、悔しいに決まってる。

「私もう帰るわ。貴方達と違って忙しいの。でも悠紀なら私のペットにしても別に良いかしら?こちら側についたら人生安泰よ?アハハハ!!」
「……っクソが。」
「悠紀止めろ!!」


美那に食って掛かりそうな勢いに、マスターさんが急いで悠紀くんの上半身を羽交い締めにする。

「……そろそろ来ます。」