「じゃあお前、小春のこと。」
怒り狂うゆうまとは対象に、冷静に問いかける悠紀くん。
そして、その答えに美那はいつもの派手な色のリップが塗ってある、口角を右にあげる皮肉な笑い方は癖なのだろう。
何度見ても胸糞悪い。そして、胸糞悪いのはこの笑顔だけじゃない。
「私の話を勝手に信じたのはそちら側でしょ?ていうか、小春?誰かしら?そんな話題私したかしら?証拠はあるの?」
クスクス笑う美那の姿に、ゆっくりと私の方を見る悠紀くん。
そして、ほんの数分前に見せていた突き刺さる視線は消えていて、怒りと悔しさで思わず涙が出そうになるのを我慢している私の姿を、何かを後悔をしている物悲しい目をして、こちらを見つめていた。
悠紀くん、大丈夫だよ。
そんな顔をしないで。私は大丈夫だから。
「でも美那さん、このY地区の土地の所有者は美那さんの婚約者、前田さんのお祖父様のですよね?」
「えぇそうね。入籍をしたら彼に権利が渡ることになってるの。そうしたら私のものでもあるじゃない?」
マスターさんが美那の強欲に苛立ちを隠せず、タバコを吸い始める。
「婚約が破棄されない自信があるのですか?」
「アハハハ!安っぽい感情論で破談出来る関係じゃないの。私の父の会社がどれ程大きいか知らないのかしら?父の会社を、喉から手が出る程欲しいのは前田さん側よ?アハハハ!!」
私も悠紀くんも、ゆうまもマスターさんも、まるで本物の魔女を見ているかのような高らかに笑う声に、怒りで身体が震えてくる。
そして手を出してしまいたくなるこの現状に、世の中を一番分かっているマスターさんが小さな声で呟く。
「絶対手を出すな。手を出したら敗けだ。」


