視える私の見える好き


マスターさんのお店を目指して歩いていくと、シャッターが閉まったお店の前で、座り込んでる小汚いおじさんに声をかけられる。

「ん?お前見たことあるな?」

思わずビクッとしてしまったが、一番最初に来た時に声をかけてきたY月グループが、ミカン爺と呼ばれるおじさんだった。


そのまま無視をしようと、目の前を足早に通りすぎようとしたその時、ミカン爺にリュックを捕まれ強制的に足が止まる。

「見たことあるなっつってんだよ。何シカトこいてんだ?あ?昔買ってやった女だろ?ん?」

またしてもハァハァと、前回同様息づかいが荒くなるミカン爺が、私の目の前で迫ってくる。


……怖い。
やっぱり怖い。
でももうきっと、誰も助けてくれないんだ。


「……離してください!」
「あぁ?」
「止めて下さいっ!!」

いつまでもリュックを離してくれないミカン爺に向かって、生まれて初めて大声で拒否をする。


「おいおいおい……。興奮するなぁおい。ちょっとこっち来いや。」
「や、やめっっ……!!」



「ミカン爺、何してんの?」
「んあぁ?誰だよ邪魔するやつ。……うわっ!」

ようやくミカン爺の手がリュックから離れ、その隙に少し離れて距離を取る。

私とミカン爺に声をかけてくれたのは……女の人。

綺麗な茶髪にイヤリングカラーは金髪で、とても綺麗な人だったが、何処かで見たことがある気がした女の人だった。


「やだなぁ、(なぎさ)ちゃん。ちょっとお喋りしてただけだよ。」
「ミカン爺、こんな事するならもうお店出禁にするよ?それが嫌なら消えな。」
「渚ちゃんのお店出禁は困るよぉ。じゃあ夜ね!また夜行くからね!愛してるからね!」


ミカン爺は渚という女の人の腕を擦りながら、町の中に消えて行った。