「……心当たりは?」
「ねーな。って言っても覚えてないだけかもだけど。恨まれた事しかねーし。」
話してる内に明るくなっていく空の色。太陽が顔を出し、徐々に朝になっていく時間に気付き、思わず話の途中に携帯で時間を確認する。
「家戻れ。母さんいるんだろ?心配するぞ。」
優しい声かけに思わず、
──…まだ一緒にいたい。
溢してしまいそうになるほど、心の本音が言葉に出てしまいそうになるが、現実はそう生易しいものではない。
こんな時間に家から抜け出した事がバレたら、今までで見たことが無いくらい怒られるだろう。
「……また会えますか?」
「……は?」
ズキッ
調子に乗って、ついこんな言葉を言ってしまった。
悠紀くんの反応に、まるで心臓に針が刺さったような心の痛みに下を向いてしまう。
「すみません。戻ります。」
「今度はちゃんと明るい時に来いよ。つか、来る時連絡しろ。」
「……え?」
悠紀くんがズボンのポケットから携帯を取り出し、ゆっくりと何かの操作をしたと思ったら、
「ホラ。」
画面に写し出される悠紀くんのLINEのQRコード。
「いい、んですか?」
「何その遠慮気味。要らないならしまうぞ。」
慌ててリュックから自分の携帯を取り出し、慣れない動作で悠紀くんのLINEを追加する。
「二万円ね。」
「払いたい気分です。」
本気でそう思う。彼の朝焼けに照らされる姿を目に焼き付け、そして無意識だった。
あまりに彼の姿が愛しすぎて…
あまりに彼の姿が眩しすぎて…
そして、ほんの少し……彼に近づけた気がして……。
思わず涙が一粒溢れてしまった。
この涙は、彼には見えなかった。
だけどこれから先、私は彼の前で沢山泣くなんて。
この時はまだ知るよしもなかった。


