少しだけ気まずく、だけどほんの少しだけの安堵。
これでいい。期待をさせないで。
ジョークだと分かっているけど、真に受けちゃう性格だから。
「わり。」
謝らせてしまうのは申し訳ないけど、臆病だから。
そして私、やっぱり自信が無いから。
「いいんです。」
お互い一言だけ会話を交わす。
そして偶然なのか、お互いの携帯に連絡が入って同じような反応を見せる。
「ヤバ!母さんに切れられる!」
「ヤバい!お母さんに怒られる!」
どうやら送り主は、どちらも母親。
「俺行くわ!」
「私も帰る!」
そう言ってお互い早足に動き、T字路で左右、綺麗に別れる。
さっきまであんなに落ち込んで、だけど気付くと少しだけ気が紛れた。勿論今でも心の中のモヤモヤは全て晴れない。
そして思い出す、彼との会話、笑顔、ちょっとだけ繋がれた手。
分かってる、分かってる。
ジョークだって分かってる。
分かってるけど……!
好きになる理由が有りすぎて、止められない感情。
考えても考えても、悠紀くんの事が好き。
例え今は、他に好きな女性がいるとしても。
だけど、止められない。
急いで家に帰ると、遅くなった時刻にお母さんがご立腹中。
「遅くなるなら遅くなるで連絡しなさい。勇太郎さんも勇次郎さんも心配してたのよ!!」
先ほどの私の状況に、勇太郎さん達と繋がっているお母さんに連絡が入ったのだろう。
「ご、ごめんなさい。」
「もうっ。とりあえずご飯食べなさい。」
ほぼ初めてと言っていい程、帰宅が遅いと注意をされた。
お母さんに怒られる事は当たり前に怖いけど、だけどさっきまでの悠紀くんの事を思い出しては、ご飯がまともに喉を通らない理由は沢山だ。
「あら?小春の光の色が変わってる。」


