視える私の見える好き


「元気出たじゃん。俺のお陰だね。じゃあ二万円ね。」
「えっ!高いですね!?お、おろしてきていいですか!?」

流石に二万円なんてお財布に入っておらず、慌てて悠紀くんに提案すると、今まで聞いたことが無い大きな笑い声で、

「ちょ!嘘だって嘘。鵜呑みにするとかどんだけ馬鹿なの?」

アハハハ!と、大きな笑い声と見たことが無い笑顔。
よくよく考えたらジョークだと分かる事を、つい真に受けて笑われてしまった。

「……仕方ないじゃないですか。慣れてないんです。こういうの。」
「どういうの?こういうの?」




そんなつもりで言ったわけじゃないのに、思わぬ展開に汗をかく。

悠紀くんが私の手を握り、そのまま引っ張られる形で歩道を歩いていく。


な、な、な、なんでこうなってるの!?


「あの……。す、すいません。身体が持ちません……。」

繋いでる手から滝のように流れてしまう手汗が恥ずかしくて、沸騰しそうなくらいのパニックに、素直に自分の心境を伝えてしまう。

「お客さん、可愛いからサービスね。」

離してくれない手。
小悪魔のように、ズルイ台詞と商売のような笑顔。

分かってる、ジョークだって。分かっているのに、嬉しくて恥ずかしくて、そしてちょっとだけ切なくて。




繋いでくれる手を握り返す事は、私には出来なかった。


「……駄目ですよ。こういうのは、好きな人とするものです。」


言いたくないけど言わなきゃいけない事実。
本当は、悠紀くんではなくて自分に言い聞かせたかもしれない。

だって、彼の好きな人は。

──私じゃない。


こんな事をされて、嬉しいのに悲しいなんて。

そして悠紀くんは、申し訳なさそうな顔で繋いでくれた手を、ソッと離してしまった。