「……悠紀……くん。」
タイミングが良いのか悪いのか。
こんな最悪なテンションで悠紀くんに会えた所で、またもや言葉が出てこなくなってしまいそうだ。
そしてまた、不快にさせると言われてしまうんじゃないかと、ただでさえ涙目から零れてしまいそうな涙。
それならいっそのこと、私をこのまま通り過ぎて貰った方が良い。
目線を下げ、会釈をして悠紀くんの横を通り抜けようとしたら。
「おい、何処行く?そっち行ったらY地区の夜の時間だからまたトラブルぞ。」
「え?」
思わぬ声かけに、下を向いていた目線は悠紀くんの顔に向ける。
「まだ体調悪いのか?」
「え、いや。」
「フーッ。」
明らかなため息を吐かれて、またしても苛々させてしまったんじゃないかと身構えてしまう。
「俺……そんな怖い?」
「え?」
「何でもねぇ。行くわ。」
長い前髪から見えた悠紀くんの少しの表情。
怖かった。最初見た時は何だか別世界の人みたいで、私には関われない人だと思ってた。
だけど……。
「怖くない!!」
思わず悠紀くんを見て叫んでしまう。
その声にビックリした彼は、私の顔を見て一度長い前髪を捲し上げる。
そして、その一瞬で見えた右側のこめかみに傷。
でも、理由の知らないその傷も、耳に空いてる沢山のピアスも。
堪らなく愛しく感じてしまうんだ。
「怖く、ない。そうじゃなくて。今日私……多分人を不幸にさせたと思う。」
「はっ?何それ?」
笑い事じゃない内容なのに、悠紀くんが私に初めて歯を見せて笑ってくれる。


