「エヘヘ、仕事って嘘でした~。サプラ~イズ!」
「……バーカ。」
私と悠紀くんの目の前に現れた女の人は、金髪に近い派手な髪色で巻いた髪の毛に、美脚を主張するかのようなミニスカート。
綺麗にメイクをして、私でも知ってる高級なハイブランドのチェーンバックをぶら下げて悠紀くんの腕を組む。
……っっ。
この人、見たことある。
前に仕事の帰り道、歩道ですれ違った忌々しい黒い靄。
運命の証が無い人だ。
出来ることなら二度と見たくない存在。どんな素行をして文字が消えたのか、それとも生まれつき文字の無い人なのか。
どんな理由であれ黒い靄からまるで、ヘドロのような油分が入った黒い滴が、ポトッポトッと落ちているのも見える。
ぐっ…。
思わず口を押さえて嗚咽しそうになる。
「……何この女?知り合い?」
「え?いや、知り合いではないかな。」
「ふ~ん。」
女の人は明らかに私を見下したかのような視線、派手なリップをした唇の口角が片方だけ上げて、私を見てクスッと笑う。
「ダメよ~?Y地区に入ってきたらぁ。変な事件に巻き込まれて行方不明者リストに名前上がるかもよ~?」
「美那……Y地区を何だと思ってんだよ。」
悠紀くんの腕を、両手でしっかりとホールドしている二人を目の前にして、黒い靄と目を背けたくなる光景に、どんどん気分が悪くなる。
見てられない。
とてもじゃないけど、この空間に耐えられる気力が全く無い。
自分でもわかる、青白くなっていく顔色に冷や汗が止まらない。


