「それが訳ありでもない、別に仕事を探しに来たわけでもない。仕舞いには勇太郎達から心春ちゃんを苛めたらどうなるか分かってるんだろうなって脅されてな。」
「えっ!!」
正直に勇太郎さんと、勇次郎さんに話した悠紀くんへの恋心。
まさかその二人が悠紀くんに伝えてしまったのかと、思わず大きな声を出す。
「良い意味でも悪い意味でもあの双子は素直だから。」
マスターさんの言葉にどうやら悠紀くんの耳に、私の感情が伝わっているであろうその事実に、両手で「うぅ……。」と、顔を塞ぐ。
「ハハッ、まぁ悠紀は信じてねーから。どっちみちアイツ好きな女いるから、言葉悪いけど相手にもしてねーよ。」
その言葉の現実に、今度は両手で隠した顔をカウンターのテーブルに引き寄せられるように、顔を伏せる。
そうなんだ。
忘れていないけど忘れたいその事実。
彼には好きな人がいる。
「……もう付き合ってるんでしょうか?」
顔をカウンターのテーブルにうつ伏せのまま、マスターさんに思わず聞いてみる。
「そこまでは知らねーな。アンタと同じX街の女で、何故かこの辺りをウロウロしてたら案の定変な男に声かけられて、悠紀が助けたのがキッカケっつーか。」
……私と同じだ。
そこで恋が生まれるのよくある話しというか、理想の展開というか……。
本来なら私だった筈なのに。
というかそんな順番、後でも先でも私の事なんて好きにならないだろう。
ずっと疑うことなく、運命の文字が同じなら、自然と結ばれることだと信じていたけど…
もう分からない。
コップに入ってある氷が暑さでカランと音をたてる。


