思わずビクッとしてしまうが、金髪の男の子が

「聞いたぜ?あの双子の勇太郎さん達が働いてる店の雇い主なんだって?」
「え…マジかよ。」
「あの勇太郎さんと勇次郎さんの…?すっげぇ。」

Y月グループのメンバーが何故か尊敬の眼差しで私を見ている。
一体過去にどんな事をしていたの勇太郎さんと勇次郎さん…。

「…眼鏡ちゃんか?」

悠紀くんが長い前髪をかき分けて、一瞬だけ顔をしっかり見えて思わず顔が熱くなる。

前に見た同じ白いロンTに、ダメージのデニム。
変わらない長い前髪は、かき分けてもまた直ぐに目を隠してしまった。

Y月グループに囲まれた男女は、この状況でも青白い顔をしてへたり込んだまま。

「も、もう止めませんか?きっともう…反省したと思います。」

悠紀くんが先ほど蹴りあげた主犯格であろう、鼻血を出している渡辺トモという前髪をグイッと持ち上げ「聞いた?今の。」と、冷淡な声で小さく呟く。

渡辺トモは泣きながら首を上下に大きく振っている。

正直その光景が怖くて堪らない。私ごときでその場が治まるとは思っていないが、悠紀くんがこれ以上怖いイメージをついて欲しくない。だけど悠紀くんが突然、

「じゃ、これで終わり。救われたねお前ら。サッサと消えて。同じ事したら次は無いと思って。」

へたり込んでいた学生達は、返事もしないで逃げるように走って行ってしまった。

Y月グループは物足りない顔をしていたが、悠紀くんが終わらせてしまったのなら仕方ないといった感じだろう。