そんな無法地帯を大人も黙る、むしろどんな大人達も手も口も出せない不良グループが存在する。


【Y月グループ】


メンバーは基本的この地区生まれの子供ばかりだが、虐待され、行き場を失ったY地区以外の未成年も中にはいた。
何人所属しているかは謎のまま。というのも、昨日まで一緒に窃盗をしていたメンバーが、今日は路地裏の狭い場所で身ぐるみを剥がされて痣だらけで息をしていない事があるからだ。

そんな人数が不透明なグループでもリーダーと呼ばれる男がいた。


悠紀(ゆき)
年齢は多分17歳。母がこの地区で15歳の時に出来た子供だ。

堕ろす選択肢等無かった悠紀の母は女手一つ、むしろまだ子供と呼んでもまだ違和感のない年齢ながらも、愛情を持って育てていった。

不運な境遇をものともせず、勝ち気な性格に母親譲りの整った顔立ち。
子供の頃から大人達から半殺しを何度もされてきたせいか腕っぷしも強く、そして喧嘩っ早い。

売られた喧嘩は裏社会の人間だろうと容赦しない。

自分を見下す奴ら、自分を嘲笑う奴ら、悠紀を貶める者達は全部ぜんぶ悠紀の手によって制裁が下る。


「ここ(Y地区)だから何でもアリなんだよ。お前のキタねぇ腹から内臓垂れたくなかったら失せろよ。」

細身ながら生きてく上で勝手に鍛えられる身体。

黒髪の長い前髪で端整な顔を隠しているが、顔面に返り血を浴びた口元が笑いながらほくそ笑みを浮かべる。