ハッキリ言ってお店のボロい引戸のドアを開けようと悠紀くんが手を伸ばすが、開ける前に悠紀くんが私の顔を見て口を開く。
「どっかで会ったことあったっけ?」
「え?」
「俺、記憶力良い方なんだけど覚えてないんだよね。」
「……ないです。今日初めて……だと。」
初対面に納得されたのか、その後は返事をされずガラガラと何かに引っかかる音と共にドアを開ける。
「マスター来たよー?用事って何?」
「おぉ、お疲れさん。お前がこの前言ってた女の事わかったぞ。」
「は?ガチで?ヤバ!流石マスター。」
私の存在が居ないかのように会話を続ける二人に、どうしていいかわからず外観通りの古い内装を見て時間を過ごす。
「でもお前、X街のお偉いさんの娘らしいぞ。立場が違いすぎる。」
マスターと呼ばれている男の人を見ると、痩せた身体で顔にあちこち縫ったような痕跡に鋭い目付き。タバコに火をつけてフーッと煙を吐いている。
そして、
「なに?この子。拾ったの?」
「あ?いや、何かミカン爺に絡まれてたんだけど仕事じゃないっぽいからさ。」
「お前さ、あんまり一般人に関わるなよ。渡辺トモの件もそうだぞ?そんな事で腹立つようじゃお前もまだガキだな。」
マスターがガハハと笑い、悠紀くんがムッとした表情でカウンターの椅子に座る。
「俺らの名前使ってアイツら取引してんだぞ?腹立つに決まってんじゃん。」
無言で出されたコップに入った水を一気飲みする悠紀くん。
それを見てマスターが「だからガキなんだよ。」と、またガハハと笑っている。


