視える私の見える好き


Y地区に繋がる橋の歩道をゆっくり歩いて初めての土地に一歩足を踏み入れる。

後ろを振り向くとX街、前を見ても特に変わることない風景。
住宅だって普通に並び、赤いポストや自動販売機も普通に置いてある。


「別に……普通だなぁ。」


初めてのY地区の第一印象は本当にこれ。皆が言っていた無法地帯や、そこら辺に人が倒れているといった噂はどこへやら。

そのまま初めて歩くY地区のコンクリートの歩道をとりあえず、左右見ながら歩いていく。

歩いて気付いたことはX街より車の数は圧倒的に少なく、人もほとんど歩いていない。ただ歩いていないだけでカートを押したお婆ちゃんや、自転車に乗っているお兄さんと普通にすれ違ったりしている。


案外拍子抜け。

と、思ってしまったが真の目的はY月グループのリーダーを見たくてここまで来たんだ。

あてもなく歩いて辿り着けるものなのだろうか…と、思っていたら。



「お嬢さん仕事?」
「……っ!?」

全く気配に気付かず、いつの間にこんなに近くにいたのかわからない歯が沢山抜けた、何日着てるんだろうと思わせるスーツを着てる男性に、声をかけられる。


「……いえ。あの。」
「こんな時間に制服でアピールとかチャレンジャーだねぇ。これでどう?」

男が人差し指を立ててニヤニヤしながら更に近づいてくる。




……怖い。
どうしよう。逃げなきゃ……誰か、助けて……と、周りを見渡すが、少ない通行人がこの状況を見ても何も反応してくれない。

なん、で。……どうして。