視える私の見える好き


学校を後にして、ここから少し遠い河川敷に向かう。
いつも通りに車が時たまクラクションを鳴らす程行き交っている道路を横目に、いつもゆっくりと歩く足が、


気付けば早足。


平日の午前中でも私服の若い人達は街を歩き、学校をサボっている学生達もチラホラ見える。

勿論私もその内の一人。

学校なんて人生で一度もサボったことはない。なんなら早退も遅刻すらもない。
そんな私が学校を黙って早退し、制服を着たままあのY地区に向かっている。


会えるかもわからない。

話せるかもわからない。


なのにどうしてももう一度、あの姿を見たくて堪らないんだ。




30分程歩いて見えてきた河川敷。

一度も踏み入れたことがないY地区に入る橋を前に、さっきまで急いでいた足がピタリと止まる。

突然に思い出す過去に言われた言葉。


【Y地区に近づくな、拐われる。】


誰に何度言われたかわからない。
近所のおばさん、お店のおじさん。小学校の時の先生。

皆が口を揃えて言っていた。

……本当に拐われたらどうしよう。お母さんに何て言おう。もし……私が乱暴されたら……。




だけど行かなきゃわからない。

決して消えてくれない浮かび上がっている文字を見て一歩、右足を前に出す。

この目でもう一度確認したい。

さっきと同じ強くなっている光りを感じてまた一歩、左足を前に出す。