chapter.1











右を向けば若者達がお洒落な服を着ながら食べ歩き、左を向けばスーツを格好よく着こなすサラリーマンに、それに負けじとパンツスタイルやタイトスカートで優雅に歩く大人の女性。

少し歩けば沢山の娯楽施設。

少し歩けば何でも買える大型スーパーマーケット。

少し車に乗るだけで観光名所に、少し飛行機に乗っただけで南国に着くそんな街。


どの人も笑顔に満ち溢れ、どの人も心が豊かな人ばかりだ。


そんな場所から、まるで境界線と言わんばかりの河川敷。
河川敷の向こう側それは----。



Y地区。

法も行政も、こちらのルールは通じない無法地帯。
住民登録をしている人達は半分も居ないだろう。

中には戸籍すら登録されていない住人もいる。

暴力、恐喝、売春、薬物、違法賭博、これらのことが日常茶飯事で、裏世界、反社的の毎日に何処かで誰かが外のコンクリートで冷たくなっていく。

小さい頃、誰しもが必ず大人から言われてきた言葉。


【Y地区には近づくな。(さら)われる。】


警察ですら介入しないこの地区に住人は今日もまた、一人増えては一人減る、そんな嘘のような世界で住人達は、希望を持たず、今日を生きるのに必死に一日を過ごしていた。