chapter.2



先ほどの騒ぎに教室内が落ち着かない。
本鈴が鳴っても担任が来ないのを良いことに、皆好き勝手にお喋りが止まらないでいた。


「Y月グループって見るからに柄悪いよね。」
「あの柔道部の顧問さ、うちらにセクハラっぽいことしてたからぶっちゃけスカッとしなかった?」
「わかるー。」


女子達は笑いながら騒ぎ、男子達はリーダーの悠紀のあの一撃に引いている。


「一発だぜ?」
「あり得ないよな。俺らが殴られたらガチで死ぬって。」
「まぁ、所詮そういう輩ってことでしょ。」
「暴力でしか勝てないからだろ。Y地区の奴らは。」


噂通りのY月グループの強さに勝てもしない力の差を目の当たりにして、関わらない事を良いことに嫌味を言う人もいる。

ただ、今の私にしたらそんなことはどうでもいい話であって、そもそもY地区の人達がX街に昼間から堂々と現れるのは少しレアであり、何よりリーダーと私が運命の相手ということに動揺が止まらない。


なんで…
あんな怖い人と私が…


なのに考えれば考える程、遠くで見えただけのリーダーの姿を思い出すだけで胸が締め付けられるような初めての感情に襲われる。


「おーい!先生達ちょっと緊急会議開くから自習なー!」

教室の扉から頭だけを出した担任が、慌ててまた職員室に走って行ってしまった。
さっきまで騒いでいた生徒達の半分は直ぐに興味を無くし、もう半分はそのままY月グループの話しで盛り上がっている。