ドンッ
「あ、すみません……。」
前からスマホを見ながら歩いていた派手な女の人が私の肩にぶつかるが、その女の人は私に見向きもしなくそのまま前を歩いていく。
そんなやり取りも、もはや当たり前なのだがふと気付いてしまう。
「今の人……。」
肩がぶつかり一瞬だけ見えた、香水がキツイ女の人の姿。
胸元に光る文字が……ない。
滅多に無いことだがこういう人がいるのも事実だ。
例えば運命の相手が病気や事故で亡くなっても、残された相手の文字は消えることなく文字も変わらない。
それは定められた運命の相手なのだから。
特殊な文字が一致せず、人生を添い遂げる恋人や夫婦はごまんといる。
しかし文字が一致しない関係はやはり困難を乗り越える程の絆など無い。
裏切り、苦しみ、憎しみ、疑心暗鬼
まとわりついてくる負のオーラを取り払うことも出来ず、一致しない相手と一緒にいても残念ながら幸せにはなれない。
だけどほぼ全員持っている証が、先ほどの肩にぶつかってきた女の人のように無い人はかなり稀だ。
【証が無い人間】
どんな人とも上手くいかない。一番好きなのは自分であり、自分が一番になれる為なら手段を選ばない。
産まれた時から沢山の群衆を見てきては、テレビや携帯からでも見える特殊な文字が無い人は今の人で三人目だろうか。
お母さんとお婆ちゃんも同じような言葉を言っていたのを思い出す。
「関わってはダメ。悪魔にですら見放された存在だから。」
初めて見た特殊な文字が浮かび上がっていない人を見て、泣いて混乱した幼少期。
胸元はどす黒い靄に包まれて、まるでそこから飲み込まれてしまいそうな禍々禍々しいオーラ。
見ただけで吐き気を催す。


