prologue.



「お母さん、これは何?」


物心ついた時から見えていたからこれが当たり前だと思って過ごしてきた幼少期。

女の子、男の子、大人の女の人も男の人も皆みんな、胸の真ん中に浮かび上がる何かの形。そしてその形は優しい光に包まれていた。

心春(こはる)ちゃん。心春ちゃんが見えているのは大好きな人と結ばれる証なの。その証と同じ形をしている人が運命の相手と呼ばれるのよ。」


私の胸に見えている形は日本語でも英語でもない、不思議な【文字のようなもの】が浮かび上がり、光を放っている。

私と同じ形の人が運命の相手。









こんな力、欲しくなかった。


運命の相手は大好きで大好きで、どんなことがあっても辛い時があっても、支え合いながら一生を添い遂げるそんな素敵な関係性だと思っていたのに。



「もう二度と、俺の前に現れないでくれ。…嫌いになる前に、お前のことが嫌いと思う前に此処から出てってくれ。」



悠紀(ゆき)くん

私と悠紀くんの胸の真ん中にある文字はおんなじなのに。



どうして私だけが好きなんだろう。

どうして私が運命の相手なんだろう。




「私は…私は…っっ!」

何度君に信じて欲しいと願ったのだろう。



もう二度と
悠紀くんの前に現れないと約束するから。


その代わり、もう自分を責めるのはダメだからね。



私なんかが、運命の相手でごめんね。