まだ3歳の芽衣は、やっぱりお母さんがいないことに寂しそうな顔をしていたけれど、それを口に出したりすることはなかった。
小さい頃のわたしに似て、芽衣もあまり不満や寂しさを口に出せない性格なんだ。
お姉ちゃんであるわたしがちゃんと受け止めてあげられるから、思ったことは何でも口にしてもいいのに……。
そう思うけれど、自分もそうだった手前、芽衣に強く出ることはできない。
わたしの通う彩葉高校は家から徒歩で通える距離にあるから便利だ。
ただ、幼稚園からとなると話は別だけど。
だからわたしは今日自転車で登校している。
力強く漕いで、ビュンビュンと風を切る。
朝の春の風が心地よくて、後ろ髪をなびかせながら学校への道のりを辿った。
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学校に着き、駐輪場に自転車をとめ自分の教室へと向かう。
一昨日に入学式があって、わたしは今年の春から晴れて高校1年生になった。
……のはいいんだけど。



