先輩のこと、好きになってもいいですか?



まだ3歳の芽衣は、やっぱりお母さんがいないことに寂しそうな顔をしていたけれど、それを口に出したりすることはなかった。


小さい頃のわたしに似て、芽衣もあまり不満や寂しさを口に出せない性格なんだ。


お姉ちゃんであるわたしがちゃんと受け止めてあげられるから、思ったことは何でも口にしてもいいのに……。


そう思うけれど、自分もそうだった手前、芽衣に強く出ることはできない。


わたしの通う彩葉(いろは)高校は家から徒歩で通える距離にあるから便利だ。

ただ、幼稚園からとなると話は別だけど。


だからわたしは今日自転車で登校している。


力強く漕いで、ビュンビュンと風を切る。

朝の春の風が心地よくて、後ろ髪をなびかせながら学校への道のりを辿った。


 *


学校に着き、駐輪場に自転車をとめ自分の教室へと向かう。


一昨日に入学式があって、わたしは今年の春から晴れて高校1年生になった。

……のはいいんだけど。