先輩のこと、好きになってもいいですか?



お母さんを見送るために玄関まで来たわたしは、お母さんに楽しそうに茶化される。


むう、と唇を尖らせて反抗したけれど、それはただお母さんに言われたことが気恥ずかしいだけで、内心は全く怒ってなんかいない。


「ゆう、火の元には気を付けるのよ。台所の上に5000円置いといたから、それで食材買って夕飯作って食べてね。ほんと、こんなに苦労させてしまうのは申し訳ないんだけど……」


お母さんは両眉を下げてそう言った。


「大丈夫だよお母さん。わたし、家事得意だし。だから、わたしたち家のことは何にも心配せずに、楽しんで仕事してきてね」

「……っもお、私の愛娘はなんて良い子なの~! お母さん、感動しちゃう」

「ふふ、はいはい。ほら早く行った方が良いんじゃない? お母さんたまに抜けてるとこあるんだから、飛行機乗り遅れちゃうかもだよ?」

「……! まあ、大変。ゆうの言う通りね。それじゃあ、行ってきます」


お母さんは、大きなリュックサックと鞄を持って家のドアを開けた。


「いってらっしゃい。気を付けて帰って来てね」


わたしのその言葉に笑みを返した後、お母さんは出掛けて行った。後からガチャリ、と鍵を閉める音が聞こえた。