「……っ、うん。すげえしあわせ」
シャワー上がりの濡れた髪のまま、涼太くんは目をうるうるさせてわたしを強く抱きしめた。
そのまま2人して手を繋ぐ。
もう2度と離さないというように。
強く、強く、握りしめ合う。
「ふふっ、そっかあ。涼太くんが幸せなら、わたしもすっごい幸せだよ」
高校生の頃、わたしがクラスで孤立していたのに気づいていたらしい涼太くんは、お昼休みや放課後、わたしに教室まで会いに行っていたらしい。
だけどいつもすれ違って、わたしは涼太くんの優しさに気づけなかった。
独りぼっちだった君には、他人に優しさをあげられる強さがあった。
それを知った時には涙が止まらなかったのを今でも覚えている。
今では高校時代にできなかった大切な親友がいて、隣に愛する人がいて、愛しい我が子がいる。
もう、それだけで十分すぎるほど、わたしは幸せだ。
「……今、ゆうの言葉を借りて伝えたいことがある」
「ん? なあに?」
涼太くんの、少し強張った、緊張した表情。
だけど、それと同じくらい頬に赤みが指している。
「ゆうのこと、死ぬまで好きでいていいですか?」
涼太くんからのかわいすぎるほんのささやかなお願いに、わたしは満面の笑みを浮かべて頷いた。
[fin.]



