「それに…、」
「も、もういいです! もう十分お腹いっぱいです」
さらに続けようとする先輩の口を手で塞いだ。
そして、ずっとしてみたかったことをした。
「先輩、わたしのことをそんな風に想ってくれて、ありがとうございます。本当に、嬉しかったです……っ」
涙が一粒零れ落ちたと同時に、先輩の形の良い唇に自分のを重ねた。
初めてのキスは、涙が混じった少ししょっぱいキス。
だけど、それでいいと思った。
不器用同士のキスは、それくらいが丁度いいって。
何度も何度も、互いに唇を重ね合わせる。
夕闇が迫り、太陽が1日の中で1番眩しい夕日を発光する中、わたしたちは幸せの淵にいた。
夢にまで見たこの瞬間を、今確かにこの手で掴めている。
わたしと先輩の初恋は、あまくて苦い、だけどとても愛おしいもの。
それはきっとこれから先も、形を変えながらずっとわたしの心の真ん中で輝き続けるのだろう。
だから、わたしは勇気を出してずっと訊きたかったことを訊いた。
「先輩のこと、これからも好きでいていいですか?」



