先輩のまっすぐな瞳と目が合った。
今度こそ、わたしはそれから目を逸らせない。
「……先輩のことが好きだってことに理由はないって言ったら、どうしますか?」
「……、」
少しの沈黙の後、先輩が告げた答えは。
「っふ、いいじゃん。好きに理由はないってよく言うでしょ?」
そう、軽やかに笑う先輩に、わたしはまた目を奪われた。
───ああ、そうか。
あの日と同じ、胸が高鳴るこの感情の正体は、『一目惚れ』にあったんだ。
「……まあ、そうですけど! だけど、先輩がわたしを好きな理由は知りたいです」
「はあ〜? 強欲だな、ほんと」
「いいじゃないですか! だって、これは後から聞いたことなんですけど、先輩って極度の女嫌いなんですよね? そんな先輩がわたしみたいな芋女と付き合いたいなんて言う理由、知りたいじゃないですか」
「あー、もううるさいうるさい。おれは、美辺のそのまっすぐな目にずっと見つめられてたいって思ったんだよ! おれしか見えないって目が好き。クラスで孤立しているのに、毎日妹の面倒を見て、優しく笑える強さが好き。そして、人思いなところも良いなって思ったよ」
白月にはほんと嫉妬したけどね、と先輩は恥ずかしそうに告げた。



