「……どうせ、ウザいとか迷惑とか、そういう負の気持ちですよね。それなら別に言わなくていいで、」
「──違う」
「……え、?」
「おれ、美辺が好きだ──。……初恋、なんだ」
先輩の大きく長い腕に抱きしめられた。
すぐ近くに体温を感じる。
「……う、そ。絶対に嘘だよ……っ」
わたしのこと騙そうとしてるんでしょ、わたしの気持ちを振り回してると楽しいからそんなこと言うんでしょ、もうやめて、と。
泣きじゃくるわたしを、先輩はただ静かに、だけど確かな力で抱きしめていた。
*
「美辺……? 落ち着いた?」
そんな風に心配した顔で覗き込まないでほしい。
本当に、先輩がわたしのことを好きだと言っているみたいに思えるから。
恋なんてしたことがなかったのに、先輩をひと目見たあの日からわたしの心臓はずっとおかしい。
先輩と過ごした時間は本当にわずかしかないのに、いつの間にかこの人のことを好きになってた。
「ねえ美辺……、もし美辺がまだおれのことを想ってくれてるなら、おれと付き合ってほしい。今度は、お試しなんかじゃない、真剣なやつ」



