こうなったのは、全ておれが美辺から離れると決めたせい。
あの日、美辺の言葉もろくに聞かずに自分だけがぎゃんぎゃん喚め散らかして、本当に子どもだった。
「白月先輩は……っ、あんなに頑張ったのに。それなのに、あんな言葉はあんまりですっ!」
美辺の口から、あいつを「白月先輩」と呼ぶ声を聞いた瞬間、今度こそ出て行ってやろうかと思った。
……だけど。
「……芸術の世界において、才能のない奴は冷たく突き放されるっていうのは、鉄則だからね。そんな奴のために時間割いていられないんだよ」
白月の暗い表情、今にも泣きだしてしまいそうな声を聞いた瞬間、その思いは穴の開いた風船のようにしぼんでいった。
「…っでも、白月先輩の絵からは才能しか感じませんでした。柔らかなタッチ、繊細な色使い、そしてどこまでも広く自由に広がる、夕日に照らされた大海原。ぜんぶぜんぶ、わたしには素敵すぎて、初めて見た時は泣いちゃいましたもん……っ!」
そうだ、白月は絵を描くことが趣味だとか高校入学したての自己紹介の時に言っていたな。
「ゆうちゃんが俺なんかの絵で感動してくれて、さらには才能があるなんて素晴らしい言葉を贈ってくれたから、俺はそれだけで十分満足だし、すごく嬉しいよ。だからね、今回のコンテストで落ちたことも決して悔しがることじゃない」
「先輩はなんか、なんかじゃない……。それに、どうしてそんなに冷静でいられるんですか……!? わたしには先輩が、分かりません…っ」



