先輩のこと、好きになってもいいですか?



家の近くに作られたそれは、圧倒的に素敵な外観からどこかの国のおしゃれなカフェを連想させる。


この辺りを訪れた人は、みんな物珍しそうに写真撮影をして帰って行く。お母さんが自分のアトリエを撮影することの許可を下ろしているのだ。


『お母さん、自分のアトリエを知らない人に撮られるって、嫌じゃないの?』


一度、そんなことを思い切って訊いてみたことがあった。


『ええ、全く嫌じゃないわ。むしろ、私のアトリエが素敵って呟きや写真が拡散されて、より多くの方々に私のアトリエのことを知ってもらえるでしょ?』

『うん』

『それって、すごく幸せなことじゃない?』


そう語るお母さんの表情は、何だかとても嬉しそうで、そんな考え方ができるお母さんを見てわたしまで笑みが零れた。


きっと誰よりも心が広くて、深い愛情を持っているお母さん。そんなお母さんの娘として生まれてこられたことに、今日もわたしは密かに感謝した。


「それじゃあ、行ってくるね。芽衣はお母さんがいないことに驚くだろうけど、きっと大好きなゆうお姉ちゃんがいるから大丈夫ね」

「も、もう……っお母さん! からかわないでよ!」

「え~? ゆうだってかわいい芽衣に好かれて嬉しいくせにい」