そうやって、この美術室でわたしが気に入った点を先輩に話していった。
ひとりぼっちだったところに、ある男の子の登場と、その人と言葉を交わすことでわたしの沈んだ気分は少しずつ上昇していった。
「先輩の名前、なんていうんですか?」
「えっと、僕は白月怜王。名前に『王』が入ってて、当然偉くもなんともない僕には似合わない言葉なんだけど……」
白月先輩は恥ずかしそうに頬をかいて、そう言った。
そんなこと、ないと思うんだけどなあ。
すぐにでもそう言いたかったけれど、わたしからそんな薄っぺらい言葉をもらっても先輩は嬉しくないだろう。
だから、それを口にはしない。
「素敵な名前です。ちなみにわたしは、美辺ゆうっていいます。よく下の名前の漢字を訊かれることが多いんですけど、わたしのはひらがななので、……」
「じゃあ、ミナベさんっていう苗字の漢字は?」
先輩は首をかしげてそんなことまで訊いてくれる。
「美しいに、辺り、と書いて美辺といいます」



