「いや、あの……何も知りません。すみませんでした」
「……っふ、正直者すぎでしょ。それに、すぐに謝るそのクセ早く直して」
「しょ、承知しました。……でも、1つだけ訂正箇所があって、」
「何? 言ってみて」
「わたしは決して、和泉先輩に対してなかったことにしろと命令口調で言ってはいない……です。はいそれだけです失礼しましたっ!!」
和泉先輩の反応が怖くて、すぐにお辞儀をしたわたしは相当変だっただろう。
全身カチコチで、ロボットみたいな動きをしていたと思うから。
先輩はそんなわたしを見て驚いた顔をしていた。
昨日から、クールだと噂される先輩の驚いた表情を何度も目にする。
何事にも動じないと思っていた先輩が、実はこんなにも感受性豊かな人だったなんて……とわたしは若干感動している。
「君みたいにまっすぐ自分の気持ちをぶつけてくる子に出会ったの、おれ初めて」
優しげに笑って、目を細めながらそう言った先輩。
先輩の笑った表情を見れたのも、そんな言葉を先輩の口から聞けたのも、きっと奇跡だったのだと思う。



