「お前、さっきからほんといい加減にしろよ……」
凄む先輩と、今すぐにこの場から逃げ出したいわたし。
だけどきっと、ここまで怒っている先輩はわたしのことを簡単に逃してはくれないだろう。
「ごごごごめんなさい……っ!! わたし、何か間違ったこと言いましたかね……っ」
わたしはつくづく先輩の考えていることが分からないらしい。
わたしの的外れな言葉に、今度こそ先輩の堪忍袋の緒が切れた。
「ああ、ほんっと、お前は何にも分かってない。………で? あれからおれのこと好きになったの? いや、なかったことにしてって頼んでくるくらいだから、それはない、…」
「はいっ!!! 先輩のこと、今でももちろん気になっています!! ……っけど、それは先輩にとって迷惑なだけなんじゃないかって思って…、」
先輩の言葉を遮って、勢いよく頷いてしまった。
そこから早口で言い訳をしている途中で、ああ、やってしまったと青い顔で後悔する。
先輩はびっくりしたような顔をしていて、いつもより幾分幼く感じる。
「………、なに、言ってんの。おれにとって迷惑になるだけって、そんなこと誰が言った? お前は実際におれの口から、迷惑だって言葉が発されるのを聞いたのか?」



