まだ春だから暑くはないはずなのに、冷や汗が止まらない。
「………………は?」
結構な沈黙の後、先輩の綺麗な唇から発されたのはとても低い、不機嫌な声だった。
「へ、……っ?」
あ、あれ……っ?
先輩、もしかしてあんまり乗り気じゃない?
わたしが予想していた反応とは全く真逆のもので、びっくりしてしまう。
素っ頓狂な声を上げたわたしを、先輩がぎろりと睨む。
ひえ……っ、先輩の目は三白眼の上に切れ長だから、それで睨まれたりなんかしたら圧が物凄いよ!
心の中でそう抗議するわたし。決してそれを口には出さない。
まさに、蛇に睨まれた蛙状態だ。
「……っは。何だよそれ」
「……せ、先輩?」
「あんな勝手なこと訊いてきたくせに、今さらそれをなかったことにしたいだって? ほんと、いい度胸してるよねお前」



