先輩が立ち止まり、ようやくわたしの手を離す。
そして、わたしを振り返った。
静かな瞳には、何の感情もないように見える。
「……おれが君を連れ出した理由、分かってる?」
唐突にそう訊かれ、わたしはすぐには答えられなかった。
先輩の質問の意図を探ってみても、それは一向に分からないまま。
「わ、分かりません……ごめんなさい」
質問に答えられないのが何だか申し訳なくて、わたしは目を瞑ってそう謝る。
すると、頭上から先輩のため息が聞こえた。
肩がビクリと震える。
先輩、怒ってるのかな……?
「別に、今美辺が謝る必要ないでしょ」
先輩がそう言うのなら、きっとそうなのだろう。
「そ、そうですよね。すみません」
「あ、また謝った。すぐに謝るそのクセ、おれといる時くらい直してくれない?」
不満げな先輩の声がわたしの耳に届く。



