少し前を歩く先輩の横顔をこっそりと盗み見る。
「……」
私の質問に、先輩は何も返さない。
階段を降りて、中庭に繋がる廊下を歩く。
そしてやはり、先輩の向かっている場所は中庭だったみたいで、大きく開け放たれた扉から外に出た。
中庭には大きな桜の木が1本植えられていて、その木を囲むように金木犀の花を咲かせる木々が立ち並んでいる。
太陽の日差しはその木々の緑葉に遮られているから、夏場なんかは涼むのに最適な場所だと思う。
今は桜が満開に咲き乱れている時期で、たまに吹く強風に桜の花びら枝から離れて、ふわりと宙に舞う。
先輩はさらに中庭の奥へ進み、1つの木製ベンチが寂しくあるところまで行った。
──そこは、わたしがベンチに寝転がる先輩に告白まがいな告白をした所でもあった。
当然のようにわたしも手を引かれ、付いて行く。
ここは校舎のどこからも死角になっている場所だ。
そう、誰かが言っていたのを聞いた。



