何事だろうと思ったけれど、顔を上げる気力がない。
「え! 待って待って、どうして先輩がここに……!?」
ある女子生徒の、歓喜の混じる声が聞こえた。
「えぇ〜もしかしてこの中の誰かに用があるとか!?」
「いや、でもうちら入学してきたばかりだよ? あの先輩が用事ある子なんてどこにもいるわけ、」
きっとその子は、いるわけない、と言いたかったのだと思う。
だけど、それはある人の言葉に遮られる。
「……美辺ゆうって子、いる?」
素っ気ないけれど、決して冷たくはないその声をわたしは知っていた。
驚いて、恐る恐る顔を上げれば、教室の扉から中を窺う和泉先輩とバチリと目が合ってしまった。
まさかの展開に、真っ白だった頭が透明になってしまいそう。
目が合った手前、もう誤魔化すことなんてできない。
それに、きっと泣いているのがバレてしまった。



