あなたをひと目見たときから、わたしの心はあっけなくいとも簡単に奪われた。


あんなにも明るく輝いて視界に映ったのは間違いなく君が初めてで、すぐにこの胸の高鳴りの正体を知りたくなった。


「せ、せんぱい……」


どうにかして少しでも君に近づきたくて、あの頃は精いっぱい背伸びをしていたな。


「……? 何?」


君はいつも無気力で、素っ気ない返事しかしない。

誰に対してもそうだから、君はみんなに対して平等な人だったのかもしれないね。


──いや、かもしれないじゃなくて、そうだった。


先輩はいつだって平等の優しさを他人に分け与えることのできる素敵な人だった。


「……、その、あの、」


一向に言葉に詰まるわたしを急かすことなく、ただ静かな目をして見つめてくる先輩。


わたしを見つめる穏やかな目は、どこまでも澄んでいて、思わず惹き込まれてしまう。


息をいっぱいに吸って、新しい酸素で肺を満たす。