腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「───私が、彼の婚約者になります」

「蓬、様……!?」



扉の前で控えていた和葉の驚いた声。

頬を濡らした表情でこっちを見てきた橙華。



「何言ってるんだ蓬! お前には翠君がいるだろう! 加賀美家のほうが贅沢もできる。お前にとってはそっちのほうがいいだろう」



───橙華のことを見て見ぬふりで守るのは、もうやめる。



「この家を、継ぎたいんです。私が彼の支えになります。なので、どうか……!」



どうか、と、頭を下げた。

父親に頭を下げたのは、橙華とのことがあって以来。

父親たちは私の本気に悩み始めた。

本当にこの家を立て直したいなら、優秀な私に継がせたほうがいいと考えているに違いない。

私はそれを見抜き、畳み掛けることにした。



「───翠様は、他に好きな人を見つけたと言っています。婚約破棄したいとも。でも私が婚約破棄をされるのはまずいでしょう? なら、私から婚約破棄をしたほうがいいです」