腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「静かにしろ。蓬が今寝てるんだ」

「ああ、すみません。で、なんで立ってるんですか」

「……」



こいつ、全部見抜いてやがる。

まあ、それくらい知ってる。



「蓬を、解放してやりたい」

「は?」

「何も心配していない、安心した笑顔が見たい。どうすればいい?」



何を言ってるんだとも自分で思った。

でも、事実だ。

何も……一点の曇りもない笑顔が見てみたい。

蓬がいつも笑うとき、本当の笑顔ではない。

遠慮した、曇った笑顔。



「そんなの簡単です」

「は? 何言ってんだ」



泉が口を開いたと思ったら……。



「翠がしっかりと愛を伝えたらいいでしょう。そうしたら、自分のことも見るようになりますよ」

「……はぁ。で、今日は何の用だ」



泉の回答を流し、他の質問を投げた。

泉はこの家のスペアキーを持っている。

いわば合鍵だが、あったほうがいいかと思い用意した。