【side翠】




「すぅ……すぅ……」



寝息を立てて眠った蓬。

妹のことで、あんなに泣いてた。

どれほど、傷ついてきただろうか。

妹を守るために自分を殺し、たった独りで闘ってきたんだ。

あの優秀な頭脳も、生まれ持ってのものじゃなく、妹を守るために作り上げたもの。



「たった独りで、よく頑張ったな」



俺の言葉に蓬は応えることはなく、ただ寝息を立てて目を瞑っている。

泣きすぎたせいか、目元に涙の痕が残っている。

明日、目が腫れなきゃいーが。



「……よいしょっと」



ベッドから降りて、部屋から出る。

そして、泉に電話をかける。



《……なんです? 翠》



最初の一声はダルそうな声だった。



「ちょっと〜、主人に向かって何その言い方〜」

《……はぁ、なんですかこの真夜中に。というか、九条家と対面したんですよね? 何があったんですか》

「泉、早急に証拠を捜せ」

《……はぁ?》